お客様の相談事例
献身的にお世話してくれた長男のお嫁さんにも財産を分けてあげたい…
相続人以外にも財産を分けてあげたい場合
子がいる場合、法定相続人は配偶者と子もしくは代襲相続する孫となり、養子縁組をしていないお嫁さん(または、お婿さん)は相続人には該当しません。
当事例では、80代の女性からのご相談でした。最近、入退院を繰り返しているので万が一のときのことを心配されていました。推定相続人は、長男と長女でしたが、長男は先に亡くなっており、推定相続人は、長女と長男の子であるお孫さんの2名。長女はご結婚されて遠方に住んでいました。
そのため、日頃のお世話や看護など、長男のお嫁さんが献身的にされていたので、その恩返しをしたいというお気持ちでした。
前書きのコメントでもあるように、基本的には遺言書がなければお嫁さんは相続できません。
そこで、遺言書作成をおすすめしました。公証人役場に同席し、公正証書遺言書を作成し、他の相続人にも、なぜこの遺言を作成したのか、その真意が分かるようメッセージ(付言事項)も同時に遺言書に記していただきました。
特別の寄与制度の創設
2019年7月1日に施行された「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)」により、民法に特別の寄与制度が創設されました。特別の寄与制度とは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の相続人ではない親族(以下、特別寄与者)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができるというものです(民法1050条1項)。
上記の改正によって、今までは遺言書がなければ一切保証されなかった親族(お嫁さん、お婿さんなど)にもその貢献度に応じて財産を請求する権利が与えられました。ただし、特別の寄与は「無償」でなければならないので、療養看護や被相続人の事業に関する労務の提供をしても、対価を得ていた場合は、特別の寄与には当たりません。また、被相続人に対して単に財産を譲渡するような行為も特別の寄与には当たりません。